とんち

皆様こんにちわ 店長の睦です。 先週はしばらくホラー話が続いたので 今日は志向を変えて 「とんち話」でもしましょうか。 今日は彦一という、大変知恵の働く少年のお話を紹介したいと思います。 ホラー好きな私ですが 昔からとんち話も好きでして 小学校の頃は 漫画で読めるとんち話集をよく読んでいました。 ちなみに とんちといえば一休さんが有名ですね。 あと吉四六(きっちょむ)という名も 耳にした事がある方も多いと思います。 彦一は一休さん吉四六と並ぶ「とんち者」でした。 彦一のとんちの活躍ぶりは、お城の殿様にも届いており いつも殿様は彦一に無理難題を申しつけては 彦一のとんちに言い負かされていました。 ある日の事です。 彦一の元に、殿様からこんな手紙が届きました。 <若様の誕生祝いをするから、彦一は、庄屋と村の者を連れて8人で城に参れ> 庄屋は 「城からおよびがかかるなんて有り難い事だ!」 と喜びましたが その横で彦一は (8人で来いと指定してるのがあやしいな・・・) と手紙を見ながら苦い顔をしていました。 そして、若様の誕生祝いの当日 彦一は言われた通り 庄屋と村の者6人を連れて 8人で城に向かいました。 若様の生誕祝いに招待されたので、 庄屋や村の者はもう嬉しいやら緊張するやら。 みんなでごちそうの食べ方を考えたりで ワイワイしているうちに8人は城に到着しました。 通された大広間では、既に誕生祭が始まってました。 正面の高いところに殿様、奥様、若様、 そしてまわりに大勢の家来達や、お付きの人達がいます。 殿様は彦一を見つけると 「よしよし、ちゃんと8人で来たようじゃな。」 と含みのある笑みを浮かべました。 どうやら、彦一の思った通り 殿様はまた良からぬ事を考えているようです。 殿様はニヤニヤしながら彦一にこう言いました。 「さて、苦しゅうない、お前達こちらに参れ。 ただし、彦一。 お前は並んだ8人の中のちょうど真ん中に座るように致せ。」 急な注文に彦一がポカンとしていると 殿様の横に座っていた若様がいきなり 「それができなければ彦一は帰るがよい!」と言いました。 やれやれ 親子してとんだツンデレですね。 家来やお付きたちは、みんな飲み食いをやめて、ジッと彦一を見つめています。 人数が、五人とか、七人とか、九人だったら、 右左どちらからかぞえても、ちょうどまん中になる席ができます。 けれども、八人ではそうはいきません。 家来たちはヒソヒソと話しだしました。 「あの小僧。知恵者だと評判だが、どうするつもりだろう?」 「しかし、殿さまもお人が悪い。八人では、どう考えても、まん中にはすわれんではないか」 しばらく家来たちは、声をひそめて話していましたが、 やがて大広間は、水を打ったようにシーンとなりました。 その空気に耐えれなくなった 繊細ハートな庄屋が彦一の袖を引きながら 「おい、彦一、こりゃ無理だ。謝って帰ろう」 と言いました。 しかし当の彦一は涼しい顔。 彦一は殿様を見据えながらこのような質問をしました。 「私が真ん中に座れば、どのような座り方でもよろしいのでしょうか?」 「ああ、いいとも。ただし、上にかさなるのはだめじゃ」 こう答えた殿様に、 彦一は「承知致しました。」とニッコリ笑います。 さて、ここで問題です。 この後彦一は 重ねて座る事もなく 本当に並んだ8人の真ん中に見事座ることができるのですが 彦一は一体どうやったのでしょうか。 正解はこの下に! 正解は 彦一は、庄屋や村の人達にこう言ったのです。 「みんな、私をかこんで、丸くなっておくれ。 これなら、どこから見ても、私はちょうどまん中だ。」 まさかの輪だと〜〜〜〜〜〜〜 確かにこれなら8人のど真ん中に座る事ができるばかりか 個人的には 輪の中心に一人って お誕生日な若様以上の 主役席なのがツボです。 この発想には殿様も感心し 「うむ、あっぱれだ! 彦一よ。今度もそちの勝ちじゃ」 と笑いました。 殿さまの言葉に、家来も庄屋さんたちも、どっと声をあげました。 「これ、はやくお膳の用意をせい。それから、ほうびもじゃ」   庄屋さんたちは、彦一のとんちのおかげで たっぷりとごちそうになり、上機嫌で帰って行きましたとさと言う話です。 とんちといってもね 色々とあるんです。 思わず「なるほど!」と膝を叩くとんちもあれば 「え〜・・・それって屁理屈じゃね?」と なんだか腑に落ちないとんちだったり。 私は一休さんが絵の中の虎を捕まえてくれと頼まれて 「じゃあ私が絵からでてきた虎を捕まえるので、 まずは絵の中から虎をだしてください」 と言ったとんちは好きですが 「橋を渡るな」と言われ、 橋と、はしっこ(端)をかけ 橋のど真ん中を歩いたというダジャレとんちはあまり好きではないです。 なんというか、 完全な個人的な好みなんですけど。 ですがとんちというものは 殿様や悪商人、悪長者を言い負かすケースが多いですね。 これは昔、幕府から抑圧されていた農民が 物語の中だけでも権力者に知恵で勝ちぎゃふんと言わす事ができる・・・ 幕府から苦しい生活を強いられていた農民の人達は 聞いてるだけでスッキリしたでしょうね。 とんちで有名な主人公達は 農民達の、ヒーロー像だったのでしょう。 だからこそ、広く長く愛されているのではないでしょうか。 しかし、この彦一は時に失敗をしては恥をかいたり 笑いを民衆に振り撒いたりと 決して英雄ではない主人公なのです。 それが、彦一が広く長く愛されている理由だそうですよ。 まるで磯野さんちのカツオですね